私の職務経歴について(3)フリーター編

前回までのあらすじ

大学卒業後初めての労働は派遣だった。そこで目の当たりにした使い捨てられていく人々を見て危機感をおぼえたものの、これから先続く死ぬまでの時間を延々と労働していくというのは辛いし、やっぱり働きたくないとも思った。しんどくても妥協できる職種や業種を見つけて、そのスキルを磨かないと一生派遣のままだぞと自分に言い聞かせ、新たな職を探すのだった。

 

本題

派遣社員のときに思ったのは、これから何十年も死ぬまで働かなくてはならないということを考えると、今やってる派遣は正規の方法で労働する最底辺に近いから働くならもっと稼がないといけない、何十年も働くのであれば面倒だと感じても妥協して取り組める職種や業種じゃないときつそうということでした。そう思って頭に浮かんだのが、音楽や書籍に関わる業種でした。昔から楽器はやっていて好きだったということ、多読ではないですが当時は週に1冊くらいは本を読んでいて、そういう業種だったら製品のことも好きになれる可能性が高いし、長く続くんじゃないかと思いました。そんなときに見つけたのが出版.comという求人サイトでした。ちなみに回し者ではないです。

出版・編集の求人・転職サイト 出版ドットコム

このサイトで事務かなんかでCD聞きながらデータベースを作るみたいなプロジェクトがあるからアルバイトを募集しますみたいな記事を見つけて、辛くなさそうだし、むしろ楽しそうと思って応募しました。応募したら受かったので、そこで働くことになりました。このアルバイトは確か数か月間の期間限定だったのですが、私が有能なのがバレたらワンチャン社員になれるのでは?という謎の期待がありました。

そこでは、20代から30代くらいの音楽好きな人たちが20人くらいで作業してました。面接時に好きな音楽とかをヒアリングされていて、仕事の内容が説明された後、出版社が所有しているデモCD(正式なリリースの前に出版社とかにはデモがもらえるらしい)がそれぞれのバイトに渡されて、それを聞きながら、音楽に関する情報を登録していくっていうものでした。データとして登録する内容は定性データと定量データに分けられていて、定性データはその曲を自分が聴いてどういう印象を受けたかということをリスト化された単語からいくつかチェックするデータ(そのため、これは個人差が生じる)、定量データは作詞作曲とか演奏者とかクレジットされているのを入力するって感じです。アルバムにしろシングルにしろ、一定の数を処理していかなくてはならないため、基本的に1コーラス聞いたら次の曲って感じで、1時間でCDをアルバムで3、4枚くらいを処理する、コンセプトが大きく変わっていない同アーティストを連続で聞いているときとか、既に自分が知ってるものについてはもっと早いスパンで処理していました。だいたい半年くらいこのアルバイトをしていたと思うのですが、1日でアルバムを3-40枚くらい聞いていたのですが、特にそれを苦も無く続けられていたので、自分は本当に音楽が好きなんだなあと感じました。聞いた音源は幅が広かったのですが、私は歌謡曲とかポップスが多く割り振られたかなと思います。仕事中に一番アルバムを聞くことになったのは岩崎宏美なんですが、坂本龍一が関わっていたの知らなかった(パンドラの小箱、コロッケの真似で有名なシンデレラ・ハネムーンが入ってるアルバム)ので、坂本龍一って結構歌謡曲の仕事してたのかーって思いました。そういえば、この仕事は出版社とソフトウェア業者がコラボした仕事だったんですが、当時の勤務先を今、調べてみたら、今でもそういうデータサービスみたいなことをしてるようです。

この仕事をしていて自分が感じたのは、自分が音楽が好きだということを再認識したのですがそれ以上に、音楽についての解像度が低い、音楽について語る言葉をもっていない、そもそも音楽を聞いている絶対量が少なすぎるということでした。アルバイトをしている中でも私よりたくさん音楽を聞いている人が半分くらいだったし、中には記事を書いてそれでお金をもらっている人もいたし、インディーミュージシャンみたいな人もいたし、バイトの管理をしている人(出版社の人)ははちゃめちゃ音楽を聞いていた、いや、それが仕事だから当然と言えば当然なのですが、そういうストイックさは自分は音楽に対して持てないと感じました。この音楽に対する経験は私の中では出版というところでも、自分より本を読んでいる人間は山ほどいるだろうということで、音楽と出版の業種を狙っていくのは諦めようと思いました。この経験が出来たのは今の自分にとっては良かったなあと思っています。道を違えていたら、仕事を通じて音楽や本を嫌いになっていたこともあり得るかもしれないからです。今でも幸いなことに好きな音楽は聴いているし、最近はペースが遅くなりましたが興味のある本を手に取り読む余裕があります。バイトでは及川光博とかELO、小川範子が聞くことができたのはよかったです、聞いた音楽が少なかったおかげで、仕事で新しい音楽を知ることができました。

 

そんなわけで、自分が興味がある業種は狙わず、自分に適した職種を何か探さなくてはならないと思いました。次回、個人事務所編、お楽しみに。

 

では、ごきげんよう